CookieのPath

遅ればせながら、高木さんの日記を見ました。

高木浩光@自宅の日記 - 共用SSLサーバの危険性が理解されていない

CookieのPath指定がセキュリティ上意味を持たない件について書かれています。

日記に書かれたIFRAMEを使う方法で既に「詰み」なのですが、もうちょっと別の方法(JavaScriptを使わない方法)について書きます。

URLを細工する

被害者の「http://example.jp/aaa/」のCookieを「http://example.jp/bbb/」から取得することを考えます。攻撃者は「/bbb/foo.cgi」というCGIを置いて、被害者に以下のようなURLを踏ませます。

URL1: http://example.jp/aaa/%2E./bbb/foo.cgi
URL2: http://example.jp/aaa/..%2Fbbb/foo.cgi

※ %2Eは「.」を、%2Fは「/」をURLエンコードしたもの

例えば、IE6やSafari4でURL1を踏むと、ブラウザはfoo.cgiが「/aaa/」の下層にあるとみなすため「path=/aaa/」のCookieをサーバに送ります。一方で、たいていのWebサーバはURL1の「%2E./」を「../」と解釈するため、「/aaa/%2E./bbb/foo.cgi」を「/bbb/foo.cgi」にマップします。つまり、「path=/aaa/」のCookieを「/bbb/」以下のプログラムから参照できるということです。

URL2も同じです。たいていのブラウザ(IE6〜8やFirefox3)でURL2を踏むと、URL1と同じように「path=/aaa/」のCookieがサーバに送られます。一方で、IISCoyoteなどの一部のWebサーバは、URL2に対するリクエストを「/bbb/foo.cgi」にマップします(ちなみにIISでは「%5C」を使うこともできます)。

攻撃への利用(1)

しかし、上述のようにIFRAMEを使う方法などでCookieを取ったり、(Cookieにhttponly属性が設定されている等の理由で)Cookieが取れなくても、IFRAMEやXMLHttpRequestを使ってページのデータを盗むことができます。

ですので、上のようなURLを細工するテクニックは本当に役に立たないトリビアでしかないわけですが、むかし一回だけあるサイトのDOM Based XSSの検査で役に立ったことがあります。

そのサイトのページのJavaScriptでは、document.URL(http://example.jp/XXX/hoge.html)から「XXX」の部分を切り出して、そのままdocumnt.write()していました。そのため、(少なくともIE6では)「XXX」にタグを入れたURLを作って被害者に踏ませればXSSするのですが、困ったことに「XXX」を操作すると404(Not Found)になります。

そんな状況で使ったのが「%2E./」です。具体的には「http://example.jp/(攻撃コード)/%2E./hoge.html」とすることで、404にならずに攻撃コードをJavaScriptに送り込むことができます。

あとは、(攻撃コード) の部分をどうするかを考えればよいのですが、実は意外とややこしいです。

攻撃コードはURLに入れなければならないために制約があります。スペース等の空白文字類は使えませんし、「/」を使うこともできません(JavaScriptがURLを「/」でsplitするため)。空白文字類と「/」が使えないということは、属性付きのタグや閉じタグを入れられないということです。

このような状況には極たまに遭遇するのですが、そんなときに使うのは「<style>body{a:expression(alert(123))}」のようなパターンです。閉じタグがなくて気持ち悪いですが、少なくともIE6では動いてくれます。

攻撃への利用(2)

またCookieとPathの話に戻ります。

先の例は、「URLを操作することで、本来はCookieが送信されないページに対して、Cookieを無理やり送信させる」ものでした。その逆で、「本来はCookieが送信されるページに、Cookieを送信させない」こともできます。非常に限定された状況では、攻撃者にとって「Cookieを送信させない」ことがメリットになることもあると思います。

例えば、Cookie Aは「path=/」に発行され、Cookie Bは「path=/test/」に発行されているとします。ブラウザがこの2つのCookieを持っているならば、「/test/foo.html」にアクセスするとA・Bの2つのCookieがサーバに送られます。

ところが、「//test/foo.html」のようなURL(スラッシュをダブらせる)に被害者をアクセスさせると、「path=/test/」のCookie Bはサーバに送られず、「path=/」のCookie Aだけがサーバに送られます。

このような状況が、攻撃者にとって得になるか?というと、そんなケースはあまりないと思います。ただ、「T.Teradaの日記 - セッションIDと認証チケット」に書いたような複数のCookieを使用しているサイトにおいて、アプリが何らかの問題を抱えているという条件下であれば、一部のCookieを送らせないことが攻撃者を手助けすることもあるかもしれません。